建築会社で、営業事務を経験したことがあります。
営業の方は、外回りから帰って来ると、いつも突然、「この書類コピーしてね。5分後に出かけるから!」と、無理難題をおっしゃります。
その勢いに乗っている表情から、これは何とかしなくてはならないという使命に駆られます。「はい。かしこまりました。」と、にっこり余裕の表情でコピーを始めますが、そこへお得意先の、お話がとてもとても長い社長様から電話が入ったりします。
「ふざけんなよ!」などとは決して言いません。
以前、花屋に勤めていた時“生き物は愛情を込めて話しかけるとそれに応えてくれる”と教わったことを思い出し、毎朝パソコンに「おはよう!きょうもめっちゃ美人だね。」コピー機に「大好き。私にはあなたしかいない!」ポットに「よく頑張っているね!」と、生き物を大切に思う以上に精神誠意を込めてお話ししています。
“お願いです。オフィス機器様たちよ。あなたたちが大事な時に突然へそを曲げてしまうことが私には恐怖です。長い間、酷使されても文句も言わず働いてくださって、本当に有難うございます”
その会社のオフィス機器は、創業から推定すると10年以上働いていることになります。
入社当時は、営業の方の「早く!早く!」と指示があると、コピー機、パソコンの不具合が発生し、間に合わず怒られ、“私はオフィス機器に呪われているのかもしれない”と思ったことさえあります。
今日も薄暗くなって、オフィスを閉めるとき自然に、「パソコン、コピー機…。今日も一日お疲れ様でした。いつも有難うございます。」の言葉が出てくるようになりました。新人の営業事務員はオフィス機器のしもべです。
仕事はとても楽しく、自分で指示通りに完璧に出来た時は本当にうれしかったです。入社して1年たったころには、綺麗に揃った大量の資料を、自己満足に浸りうっとりと眺める余裕も出てきました。それも、良く働いてくれる機器があったからこそです。
転職して別の仕事に就いた時も、最初はなかなか言うことを聞いてくれないことがありましたが”声掛け”をすることによって、仕事がうまくいくようになりました。
オフィス機器は生き物だと感じています。